85.タトゥ(不二リョ)
 キスをして、彼のカラダをベッドに押し付ける。慣れた手つきでシャツのボタンを外すと、その肩を肌蹴させた。現れる、蝶のタトゥ。指先で、外枠をなぞるようにそっと触れる。
「アンタ、これ好きだよね」
「なんかね。綺麗だなって」
 呟いて、そこに唇を落とす。アメリカで彫ったというそのタトゥには、僕の知らない彼がいる。それが綺麗すぎて。だから余計に悔しくて。
 タトゥの形を舌で辿ると、そこをきつく吸い上げた。
「……っ」
 敏感な彼の身体が跳ね、僕の頭を掴む。
「痛いっスよ」
「でも、気持ちいいでしょ?」
 顔を上げると、僕は最低な笑みを彼に投げかけた。彼の顔が、一瞬にして朱に染まる。
「可愛いね、リョーマは」
 耳元で囁く。顎を掴み自分の方に向けさせると、唇を重ねた。
 指先で、僕の知らない彼をなぞる。僕がつけた痕(タトゥ)は、確かにそこにあるのに。彼の過去の所為で見えない。
「悔しいなぁ。リョーマは僕のものなのに」
 僕以外の誰かがつけた傷があるなんて。
 呟いて、また、彼の肩に痕をつける。その刺激に小さく声を漏らした後、彼は口元を歪めて笑った。
「何言ってんすか。俺はもう既にアンタのものっスよ」
 それで、アンタは俺だけのもの。
 僕の頭を掴み、髪を引っ張るようにして肩から離れさせる。見つめる彼の顔は、自分の言った言葉に顔を赤くしながらも、不敵な笑みを浮かべていて。
「そうだね」
 呟いて微笑うと、僕は彼にキスをした。
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