88.ポスター(不二リョ)
「英二んとこ、抗議しに行ったんだってね。怖かったって、英二、半泣きだったよ」
 後ろから俺をしっかり抱き締めると、先輩は、いじめちゃだめだよ、と呟いて微笑った。
「だってアレは、英二先輩が悪いんじゃないっスか。あと、乾先輩」
 女子テニス部の勧誘の為に、あの二人は手塚部長と不二先輩をダシに使ったんだ。女子テニス部に入れば男子テニス部の先輩達と練習ができるかも、なんて。デマもいい所だ。それに、よりにもよって、そのポスターの為に手塚部長と不二先輩のツーショット写真を用意してんだから。
 これで怒らない方が、寧ろ可笑しいんだ。
「何で不二先輩は断らなかったんすか?」
「だって、英二の頼みだし」
「手塚部長とのツーショットですよ!?」
「別に、二人きりになったわけじゃないからいいじゃない。それに、ただ並んでただけだしさ」
 部活中だってそういうときあるでしょ。俺をなだめるような声で言うと、先輩は強く抱きしめてきた。
 確かに、部活中は何かと二人並んでいるのを見かける。……だから、嫌なんだっつってんのに。
「アンタって、とことん意地悪なんスね」
 俺が、不二先輩が俺以外の誰かと一緒に居るのが嫌いなこと、知ってるくせに。
「大丈夫だよ。僕が好きなのはリョーマだけだから」
 俺の顎を掴み、無理矢理自分の方を向けさせると、触れるだけのキスをした。
「好きだよ」
 急に真剣な顔になって言うから。
「知ってますよ、そんなの」
 呟くと、俺は赤くなった顔をその胸に押し付けるようにして、先輩を抱き締めた。
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