92.果て(不二幸)
「白は嫌いだ」
 真白い部屋。僕と、幸村しか存在しない。
 折角用意したのに。彼は不満そうに溜息を吐くと、窓を開け放った。鮮やかな色が、心地良い風と共に入り込んでくる。
「そう?僕は好きだけどな」
 彼には似合わない新緑。僕は彼の隣に立つと窓を閉めた。まだ不満げな彼の腕を引き、白いソファに座らせる。
「こんな…何も無いところ。気が狂いそうだ」
「何も無いわけじゃないよ。ここは、僕と君だけが存在する世界なんだ」
 掴んだままの腕。手を滑らせると、指を絡めた。見つめる彼に、触れるだけのキスをする。
「二人だけの世界だよ。素晴らしいとは思わないかい?」
 世界の果てを思わせる部屋に、ただ二人きり。それ以外、余計な物は何も無い。
「……妙な事を考えるな」
 呆れた、とでも言うように、彼は溜息混じりに呟いた。その事に、僕は溜息で返した。
「何で理解らないかな。これ以上の世界は無いのに」
 彼の耳に囁き、その白い首筋に噛み付く。彼は小さく声を漏らしながらも、僕の背に腕を回してきた。そのまま、その細い身体をソファに押し付けた。
 白いシャツを脱がせ、現れた白い肌に触れる。
「世界の果て、と言うわけか」
「そう。なかなかの演出でしょ」
 身体を離し、クスリと微笑う。見つめると、彼は溜息を吐いた。僕の頬を包み、優しくキスをする。
「幸村?」
「別にこんな事をしなくても、不二がいればそこが世界の果てになる。他には、何も要らないからな」
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