96.たそがれ(不二リョ)
 昼と夜の境を曖昧にする時間。
 ずっと空を眺めてるのに、いつ昼が終わって夜になるのか。全然分からない。気がつくと空には太陽は無くて。黄色い月と青白い星が輝いてるんだ。
 似ている、と思った。窓を眺めるオレの後ろで本を読み耽っている、あの人に。
「そんなとこで読んでると、眼ぇ悪くしますよ」
「大丈夫。僕、猫目だから」
 そういう意味じゃないんだけど。
 溜息を吐くオレに、理解ってるとでも言うように先輩は微笑った。本を閉じ、オレを手招く。
 呼ばれた通りに膝の上に座ると、先輩は後ろからオレに腕を回してきた。ギュッと抱き締め、首筋に顔を埋める。
 それだけ。触れているだけなのに。
 先輩はいつの間にかオレの中に入ってくる。どんなに構えていても、自然と、気がついたら先輩はオレのココロを掴んでるんだ。
 でも、それは全然嫌じゃなくて。寧ろ…。
「好き」
「……ん?」
「ゆ、夕暮れ」
 苦し紛れの言い訳に、先輩が頬を擦り合わせてくる。赤くなた頬の熱が伝わってしまうきがしたけど。別にそれでもいいと思った。それに、きっと先輩はオレの言葉の意味なんかとっくに気づいてる。
 それが嬉しいから。
 オレは先輩の腕を解き向かい合うように座り直すと、キスをした。抱き締めるオレに、先輩がクスリと微笑う。
「部屋、暗くなっちゃったね」
「そうっスね」
「明かり、点ける?」
「……このままで、いい」
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