128.渦(周裕)
 身を任せてしまえばいい。ただそれだけのこと。
 渦巻くほどの僕の想いに飲み込まれたのなら。
 抵抗しようとするからそんなに苦しいんだよ。

「やっ、めろよ」
 裕太の唇に触れるはずだった僕の唇は、裕太の手に触れてしまった。その手を掴まえて捩じり上げると、もう一度、今度はちゃんと唇を重ねた。
「素直じゃないね、裕太も」
「オレはいつだって素直だよ。放せって」
「ダーメ」
 腕の中でもがく裕太を、その隙間も無いほどに強く抱きしめる。耳元でクスクスと微笑いながら、僕は身体を倒した。
「やめろっ………ざけん…」
 身体のかわりに今度は言葉で抵抗してこようとするから。僕は唇を重ねると、裕太の言葉を絡めとった。抵抗する意志がなくなるまで、身体も言葉も自由を奪う。
 暫くもがいていたけど、無駄だと悟ったのだろう。裕太の身体からまるで脱力したかのように力が抜けた。思わず、笑みが零れる。
「どうせ敵わないんだからさ、最初から大人しくしてればいいんだよ。そうすれば、僕だって優しくしてあげるのに」
 裕太の頬をなで、さっきとは違う、優しいキスをしてあげる。
「うるせぇよ。ヤるんだったらさっさとヤれよな」
「……何か、投げやりだね。そんなに非道い事して欲しいの?」
 身体は支配されてもココロまではそうは行かないってわけか。
「別に。それで兄貴の気がすむなら、そうすればいいさ」
 僕を睨みつけていうと、裕太は僕の首に腕を絡ませてきた。
 理解ってないな。裕太にキスをしながら思う。
 僕がどれほど裕太を思ってるか、理解ってないんだ。だから抵抗なんて仕様とするんだね。きっと。僕の愛がどれほどか理解れば、抵抗する気力すらなくすはずだよ。
 だったら。
 今すぐにでも僕の想いを解放して、この渦の中へ引き摺り込んであげるよ。
「ねぇ、裕太。アイシテルヨ」
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送