141.砂(不二リョ)
「っあ…」
 快楽と苦痛の狭間で揺れ動くリョーマを見て、不二は口元に薄っすらと笑みを浮かべた。不意に、体の動きが止まる。
「……な、に?」
 潤んだ眼で問いかけるリョーマに、不二は静かに首を横に振った。ただ、思い出しただけさ。呟いて、キスをする。
「小さい頃、裕太がね、海の砂を綺麗だからっていって僕に見せようとしたんだ。でも、乾いた砂だったから。指の間からどんどんすり抜けてっちゃって。僕のところに来たときには、もう殆んど砂が残ってない状態だったんだよね」
「……それが?」
 弟の名前が出てきたことに、リョーマは眉を寄せた。まだその体の中に不二の熱が蠢いているから、声は吐息混じりの弱いものであったが、不二を見つめる眼には明らかに不満の色が出ていた。不二は何かとリョーマと弟を比べたがった。どちらが優れているなどとは言わなかったが、少しでもリョーマの行動がリンクすると、すぐに弟の名前をあげた。おかげでリョーマは家族ですら知らないような弟の秘密まで知ることとなった。
「砂みたいだ、と思ったんだよ。君が。あの時の、掴めそうで掴めない砂のようだと」
 言うと、不二はリョーマの肩を掴み、体の位置を変えた。不二の上に乗るような形になったリョーマは、その自分の体重で、更に深く不二を飲み込んだ。その快楽に、体を仰け反らせて喘ぐ。
 求めるかのように自ら腰を動かし始めたリョーマを見て、不二はまた微笑った。似ている、と思った。掴めそうで掴めない、あの海岸の砂に。あの時の裕太が僕で、そして砂は君。普段の君は、掴めそうで掴めないんだ。留めたと思っても、すぐにすり抜けていく。
「よく言うよっ。今こうして俺を拘束してるくせにっ」
 ギシギシと音を立てるベッド。それと連動してリョーマも短く声を漏らしていた。不二はそれに荷担せず、ただ、その恍惚とした表情を眺めていた。思い出したように、ポツリと呟く。
「思い出したのは、それだけじゃないんだ」
 不二はリョーマの腰に手を置くと、思い切り下へと降ろした。
「ああっ」
「砂って言うのはね、確かに乾いていれば掴めないけど。こうして濡らしてやると」
 深く、深く突かれたリョーマは、体を反らせて快楽に喘ぐ。不二はクスリと微笑うと、その前で反り返っているものに手を触れた。追い討ちをかけるようにソレを扱く。
「簡単に掴めるようになるんだよ」
「やぁっ…あっ」
「そして僕は。そうやって作った砂の城を潰すのが好きだったんだ。この意味、わかるよね?」
「ひっ…や、め……ぁ」
 不敵な不二の笑みの意味に気づいた瞬間、リョーマは今までにない苦痛と快楽の中へと堕とされて言った。
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