142.チーム(不二切)
「ああ。そう言えば。ジュニア選抜にアンタも選ばれてたんでしたっけね」
 僕を見止めると、彼は挑発的な視線を向けてきた。それを笑顔で受け流し、構わず彼に近づく。
「うん、まぁね。今までは敵同士だったけど、これからは同じチーム、仲間なんだ。改めて、よろしくね」
 手を差し出す。けど、彼は両手ともポケットに突っ込んだままだったから。僕は強引に彼の右手を掴むと、握手をした。彼の顔が、挑発的なそれから嫌悪に近いものへと変わる。
「なんなんスか、気持ち悪ぃ」
「何って。挨拶だよ、挨拶」
「……挨拶なんて必要ないっスよ。例え同じチームになったからといっても、オレはアンタを味方だとは思いませんから」
 僕の手を振り解くと、彼は自分のシャツで何度も掌を拭った。敵意剥き出し、と言ったような眼を僕に向けてくる。
「非道いなぁ。そんなに全身で拒否しなくてもいいのに。そんなことされたら、僕…」
 彼の眼や態度に引き起こされる、僕の中の黒い感情。今まではずっと隠していたけれど、これからは我慢する必要もなさそうだ。彼と僕は同じチーム。同じ籠の中に入れられたのだから。
「僕?ハッ、哀しくて泣いちゃうとか言うんじゃないでしょうね?」
「……無理矢理にでも君を支配したくなっちゃうじゃないか」
「っ」
 顔を上げ、彼を真っ直ぐに見つめる。僕と目が合った彼は、今にも逃げ出しそうだった。けれど、残念。後ろは壁しかないんだよね。
「まぁ、そんなに怖がらないでよ。これから僕たちには選抜メンバーだけの居残り合宿があるわけだし。幸い、部屋も一緒で二人きり」
 手を伸ばし、彼の頬に触れる。抵抗されるかとも思ったけど、怯えきった彼はただ小刻みに首を横に振るだけだった。思わず、笑みが零れる。
「だから。これから時間をかけて、君を支配してあげるよ」
 言って微笑って見せると、僕は彼に噛み付くようなキスをした。
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