143.嘘(不二切)
「オレはっ、ぁンタのこと、嫌いっスよ」
「うん、知ってる」
 嘘だ、と思った。オレはこの人のことを嫌いではないし、このひとはオレが自分を好きだということを知ってる。知っているから、こんなことをさせるんだ。
 こんなこと。オレは今、両手を前で縛られて、足も開いた状態で固定されている。後ろにはバイブを突っ込まれて。そして、自慰をするように求められていた。
「でも、僕のことは嫌いでも、気持ち良いことは好きだよね」
 クスクスと微笑いながら、リモコンのスイッチを入れる。それにあわせて後ろの振動が強くなり、オレは耐え切れなくなって声を上げた。それと同時に、精液をぶちまける。
「あーあ。赤也が自分で抜くとこを見たかったのにな。まぁいっか。それだけ気持ち良かったってことだよね」
 まだヒクついてるオレのそこから白濁液を掬い取ると、ソレを自分の口に含んだ。リモコンのスイッチを切り、勢い良くバイブを引き抜く。
「っ」
 微かなオレの反応も見逃さずに微笑うと、不二サンは手足を固定していたロープを解いた。オレの上に圧し掛かり、濃厚なキスを交わす。
「嫌いなら抵抗してくれても良いんだよ。というか、初めから僕の誘いになんか乗らなければ良いんだ」
 唇を離すと、不二サンはそう言って微笑った。妖しく光るその蒼い眼に、心を奪われる。
「アンタがさっき言ったっしょ。オレはアンタが嫌いだけど、気持ちイイことは好きなんスよ」
「そう…」
 オレの言葉に呟くと、不二サンは口元だけを歪めて微笑った。嘘吐き、そう言われた気がした。だけど、それはお互い様だ。
「僕もね、君のこと嫌いなんだ。でも、君の苦痛に悶える姿と快楽に喘ぐ姿を見るのは好きなんだよ。それと、気持ち良いこともね」
 クスクスと微笑う不二サンに、オレも、知ってる、と呟くと口元だけを歪めて微笑った。嘘吐きという言葉を胸の中に留め、キスを交わす。
「じゃあ、続きをしようか。今度は僕も、気持ち良くしてもらうよ」
 囁くようにして言うと、不二サンは期待にヒクついているオレのそこに、同じように期待に猛っているモノを押し当てた。
「あぁっ…」
 バレている嘘を繰り返して、オレたちの夜は更に深い闇へと堕ちて行った。
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