146.冬(不二幸)
「幸村のユキが、『雪』のユキなら良かったのにね」
「……仕様が無いだろ」
「まぁ、今更なんだけどさ」
 折角外は雪が降って、綺麗な銀世界を見せているというのに、僕は彼とコタツ蜜柑。持ってきたカメラも、これじゃあ、重いだけだ。
 この銀世界も、あと数十分で人間の手によって黒く染められてしまうというのに。
「温かくなったら外出しても構わないけど。それまに雪が融けてしまうか」
「というか、もう少ししたらヒトに踏み荒らされるよ。あとは車の廃棄ガスで汚されるとかね」
 まぁ、いいさ。呟いて、僕は仰向けに寝転がった。それを覗き込むようにして、幸村の顔が視界に入ってくる。
「だったら、独りで写真を撮ってくればいい。俺の事は気にするな」
「冗談」
 彼の言葉に溜息混じりに微笑うと、僕は手を伸ばした。彼を抱き寄せ、キスをする。
「写真よりも僕は今、幸村に夢中なんだ。君を置いて行くなんて事はしないよ。それに、今はまだ冬も始まったばかりの十二月だよ。冬が終わるまでに、あと何回雪が降ると思ってるの?」
「………何か、うんざりだ」
 彼は大袈裟に溜息を吐くと、僕の隣に頬杖をつくようにして寝転がった。窓の外を見、また、溜息を吐く。
「そんなに嫌そうな顔しないの。寒いのが苦手ならさ、僕が温めてあげるから。ねっ」
 頬杖をついている彼の手を取って引き寄せる。キスをすると、僕はそのまま強く彼を抱き締めた。耳元に、唇を寄せる。
「人肌は温かいって言うしさ」
「……結局、そこに持って行くんだな」
 囁く僕に、くすぐったそうに身を捩らせながら、彼は呟いて微笑った。
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