147.どっちにする?(不二←乾vs跡)
「…って、言われてもなぁ」
 何でこんな妙な二択を迫られなきゃいけなんだろ。困ったような笑みを見せながら、僕は内心溜息を吐いた。
 目の前にいる二人、跡部と乾は答えを急かすようにじっと見つめてくる。
「だからさ、何で僕が跡部か乾のどっちかを選ばなきゃいけないの?」
 いい加減に、帰らせて欲しい。その意味をこめて鞄片手に立ち上がったんだけど。
「いいからさっさと答えちまぇよ」
「そうだ。逃げるなんて不二らしくないぞ」
 二人に肩を掴まれ、僕は勢いよくパイプ椅子に座らされた。鞄まで没収か。ついてないな、全く。
「俺様か四角眼鏡か、どっちか名前を言えばいいんだよ。気に入ってるほうの名前をよ。勿論、俺様だよなぁ?」
「いや…。俺のデータからすると、手塚との試合で底の見えた跡部よりも、手塚と同等の力を持つ柳との試合で勝った俺の強さに興味を持ちはじめている。したがって、好奇心旺盛な不二が選ぶのは、俺だ」
 ……はぁ。
 だからなんで、付き合うのがこの二人のどちらかじゃないといけないんだろ。手塚と試合をしながらも、跡部が僕のことを見てたのは知ってたし、乾が前々から僕のプライベートを探ってたって言うのも知ってたけど。まさか、本気で僕を好きだなんて。まぁ、好かれるのは悪くないんだけど。それにしても、僕の気持ちも少しは尊重して欲しい。
 というか、いつの間にこの二人は僕を巡ってのライバル関係になったんだろ。そんなこと、僕はひとつも聞いてなかったのに。
「さぁ、早く選んでくれ」
「どっちにするんだ?」
 ……うーん。
「あのさぁ、二人とも却下って言うのはナシなの?」
「ああん?他に好きな奴がいるってーのかよ」
「俺のデータだと、不二は今フリーだ」
「だったら、別にいいじゃねぇかよ」
「ものは試しだ。俺たちのどちらかと付き合ってみても損はしないだろう」
 ……そういう問題じゃ、無いんだけどな。
 跡部も乾も一緒にいたらそれなりに楽しそうだけど。付き合うとかそういうレベルになると話しが別だ。二人とも、僕を拘束しそうだしね。
 仕方がない。
「……そうだな、僕は拘束されるのが嫌いだから。僕の自由を許してくれるほうにするよ。僕と付き合う条件は、それ。僕を拘束しないこと。どう?」
「………………不二、それは――」
「いいだろう。約束する。俺は不二を拘束しない」
 僕の提案に跡部が疑問の声を上げるよりも先に、乾が頷いた。取り上げていた僕の鞄を返し、僕の手を引いて立ち上がる。
「おい、眼鏡。それは…」
「悪いな、跡部。そういうわけで、不二は俺と付き合うことになった。じゃあ、不二、一緒に帰ろうか」
 勝ったとでも言わんばかりの気持ち悪い笑みを跡部に向けると、乾は自分の鞄を肩にかけ、僕の手を引いて部室を出ようとした。その手を、振り解く。
「……不二?」
「僕、一人で帰るから」
「なっ…。だって不二、俺を選んで――」
「だから、条件。忘れた?僕を拘束しないこと」
「……あ」
「そういうわけだから。僕、先帰るね。電話とか毎日してこないでよ。じゃ、バイバイ」
 乾が跡部に見せたような勝利の笑みを僕も彼らに見せると、二人には気づかれない程度の急ぎ足で、部室を後にした。
 あー…、そう言えば、何で跡部が青学(うち)の部室にいたんだろ?


「馬鹿だな、お前。アレが不二の罠だって気づくだろ、フツー」
「…………。」
「折角俺様が来てやったのによ。結局不二はどっちも選ばなかったじゃねぇか。どーすんだよ、このままだと手塚に取られるぜ?」
「……すまん。だが、手塚に取られるのだけは避けないとな」
「テニスでも恋愛でも負けるわけにはいかねぇから、だろ?」
「……跡部だって似たようなものじゃないか」
「……………肩の怪我を見抜いたのは俺様の実力だ」
「まぁ、不二は今のところ手塚には脈無しのようだから、大丈夫だろう。それに、手塚は今九州だしな」
「だが、油断はできねぇ。アイツの情熱は半端じゃねぇからな」
「分かってる」
「だったらとっとと次の作戦を考えやがれよ」
「………その間に、抜け駆けするつもりじゃないだろうな?」
「…………………しねぇよ、そんなこと」
「……………。」
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