151.双子(不二幸)
 何故、不二には全部理解ってしまうのだろう…。
 俺の手を優しく握り見つめる不二。俺が手を伸ばすよりも先に、不二が顔を近づけてきた。その頬に触れ、キスをする。
 不思議だ。不二はいつも、俺がしたいことを先回りしてくれる。会いたいと思えば、その直後に病室に来てくれるし、逆に今日は会いたくないと思えば本当に来ない。
 それだけじゃない。今だって。ずっと傍に居て欲しいと言わなくても、傍に居てくれる。いつもは10分程度顔を出しただけで帰るのに。
「なぁ、不二」
「ん?」
「何故不二は、俺の考えてることが理解るんだ?俺、そんなに顔に出してるかな」
 問う俺に、不二は微笑いながら首を横に振った。額にかかる髪を掻き揚げるようにして俺に触れる。そこに唇を落とすと、不二はまた微笑った。
「幸村の考えてる事なんて理解らないよ。僕にはそんな力は無いからね」
「だけど…」
「僕がしたいと思ったことをしてるだけ。もしそれが幸村がしたいと思ってることと同じなら……シンクロニシティーがあるのかもね」
「……シンクロニシティ?」
「うん。ほら、双子の一方が怪我すると、もう一方も怪我をするとかさ、質問の受け答えが重なるとか。そういう類のもの。意味の在る偶然、ってやつだよ」
 繋いだ手、指を絡めると、不二はそこに右手を乗せた。
「意味の在る偶然…。でも、だとしたら少し哀しいかもな」
 不二の手を握り返し、呟く。見つめると、不二は少し驚いたような顔をしていた。
「偶然なんだろ。という事は、俺と不二が通じ合っていたわけではないと…」
「そうじゃないよ。故意じゃなく偶然だからこそ、通じ合ってるんじゃない。無意識の中でも、互いを想ってるって事だよ」
「……そうなのか?」
「そう考えた方が楽しいじゃない」
 言うと、不二は微笑った。その笑顔に、俺の中にある不安が消えて行くのを感じる。やはり、不二はいつも俺のして欲しいことをしてくれる。
「そう、だな」
 呟いて微笑うと、不二は静かに頷いた。
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