157.熱帯夜(不二切)
「あっづい」
 布団やらなにやら全てベッドの下に蹴落として。それでも気の済まない彼は、呟くと足をバタつかせた。その所為でベッドが波打ち、薄暗い僕の視界が揺れる。
「そんなに暑いなら、床で寝れば?」
「嫌っスよ。余韻くらい味わわせてくれたっていいじゃないっスか」
「余韻、ねぇ…」
 既に君がぶち壊してるじゃないか。
 溜息を吐き、仰向けになる。と、彼が僕に近寄ってきた。汗でまだ少し湿っている肌をピッタリとくっつけてくる。
「……暑いんじゃ、なかったの?」
「暑いっスけど、さっきまでのが暑かったし。それに、不二サンとなら、熱くなってもいいっスよ」
 僕の上に圧し掛かり、キスをしてくる。無駄に長いそれを止めさせるべく彼の額を押しやると、体の向きを変え、彼を落とした。僕と向き合うようにして落とされた彼が、いーじゃないっスか、と舌打ちをする。
「今日はもう終わりだよ。明日、早く起きて宿題やるんでしょう?寝坊したら、手伝ってあげないからね」
 それでも僕にキスをしてこようとする彼に苦笑しながら言った。これで無理矢理にでも眠りにつくかとも思ったけど。彼はそれどころか、眼を大きく開け、そして口元だけで微笑った。
「だったら、寝坊しないように、寝なきゃいいじゃないっスか。ねっ。名案っしょ」
 耳を出し、尻尾をパタパタと振って強請ってくる。
 確かに、クーラーのない彼の部屋で暑がりながら眠るよりは、眠らない方がいいかも、とも思うけど。
 ………そうだな。
「途中で眠ったりしない?」
「しませんよ」
「絶対?」
「絶対っス」
「……そっか。じゃあ」
 彼の肩を掴み、キスをしながらベッドに押し付ける。期待に満ちた眼差しを向ける彼に笑みで返すと、僕はベッドから降りた。明かりをつけ、散らばっていた服を着る。
「不二サン?」
「何やってんの?寝ないんでしょ?宿題、やっちゃうよ」
「………おやすみなさいッ」
「そっか、寝ちゃうんだ。もし赤也が早く宿題終わらせるんだったら、明日は僕の家に泊めてあげようかな、とも思ったんだけどな。僕の部屋はクーラーあるし、家には今誰もいないから、色んなことやりたい放題だったんだけど。そっか、寝ちゃうんだ」
「……………」
「ま、僕は別にどっちでもいいんだけどねぇ…」
「………っ。起きますよ。起きりゃいいんしょ」
「別に、嫌なら寝てていいよ」
「あーっ、ごめんなさいッ。宿題ちゃんとやりますから。だから、ヤらせてくださいッ!!」
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