173.三色限定(不二リョ)
「先輩って、ホント、欲望の塊みたいなヒトっスよね」
 ヤりたいだけ俺とヤって、それが終わったら余韻を味わうこともなく熟睡。そんで、朝、お腹が空いたと目を醒まして。今、ソファに寝転んでる俺の足の方で先輩は朝食を作ってる。
「ん?はい、出来たよ」
 俺の言葉、殆んど届いていなかったみたいだ。先輩は曖昧に微笑うと、俺の前に料理を盛った皿を置いた。隣に、体をピッタリとくっつけて座ってくる。
「俺、まだいらないっスよ」
「何で?あんなに運動したのに?」
「……うるさいっスよ。俺はアンタみたいに、欲望だけで生きてませんから」
「あー…。食欲、性欲、睡眠欲って奴ね」
 呟くと、先輩は疑いの眼差しを俺に向けた。それが、昨日の俺の乱れ振りを思い出させるから。
「ちがっ、アレは――」
「まだ何も言ってないけど?」
 慌てて否定しようとする俺に、先輩は微笑った。俺の頭をクシャクシャと撫で、自分の方へ引き寄せる。
「食事を前にしてあれだけどさ」
 俺の頭を顎で挟むと、先輩は言った。動くそれが、少しくすぐったい。
「性欲よりも排泄欲のほうが人間の三大欲求に相応しいんじゃないかって言う意見もあるんだよね。ほら、赤ちゃんには性欲なんてないでしょ」
 愉しげに。何を行き成り言い出すんだ、このヒトは。
「男なんかもさ、出すのが気持ちいいわけだから。当てはまるんじゃないの?みたいな。でもさ、僕はやっぱり排泄欲よりも性欲の方が三大欲求に相応しいと思うわけ」
 俺から体を離し、ニッと微笑うと、先輩はキスをしてきた。そのまま俺の体をソファに押し倒す。
「っ先輩?ちょっ、どこ触って…」
 抵抗する俺の手を左手で簡単に束ねると、先輩の右手は俺の下着の中に入り、その入り口をなぞるようにして触れてきた。
「……ぁっ」
 昨日のことが思い出され、思わず、体が跳ねる。
「ね。リョーマは出すよりも入れられる方が、気持ち良くなれるわけだし。やっぱり、排泄欲よりも性欲だよ」
 指を入れること無く、先輩はそれだけを言うと、俺から体を離した。顔が真っ赤になっている俺を見て、ふふふ、とムカつく微笑い方をする。
「……ケダモノ」
「良いじゃない。その方が理解り易くって」
 睨み付ける俺の視線を微笑って交わすと、手を伸ばしてきた。恐る恐るその手を掴み、体を起こす。
「世の中全部その三つで表現されてたらきっと面白いんだろうね。例えば、色とかでさ」
「三色限定?冗談じゃないっスよ。そんなんじゃ、社会は成り立ちません」
「でも。リョーマは僕の色に染まってるわけだから三色限定のヒトだよね」
「冗談。俺はあんたの色になんてこれっぽっちも染まってないっスよ」
 先輩の前に指を出し、人差し指と親指をくっつけて言う。先輩は、ほぉ、と呟くと、その俺の手を取った。
「じゃあ、当ててあげよっか?リョーマが今、何を欲してるか」
 ニヤリと微笑う。その顔に、嫌な予感がしたけど。手を握られてるから、逃げられるわけなんて無くて…。
「リョーマは今、顔が真っ赤だからね。僕とまたヤりたいな、なんて思ってるでしょ?」
 言うと、先輩は俺の答えを待たずにキスをしてきた。それも、結構深いやつ。卑怯だ。これじゃ、その気にならない方が可笑しい。
「ね。当たりでしょ?」
「………飯、冷めますよ」
「いいよ。僕もほら、真っ赤に染まっちゃったから」
 テーブルを指差す俺に、先輩は自分の紅潮した顔を指差すと、またキスをしてきた。それは今度は浅いものだったんだけど。俺が先輩の首に腕を回し、舌を絡めて、深いものにしてやった。正解です、の意味を込めて。
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