177.10年後(不二リョ)
「……それは、わからないなぁ」
 俺の言葉に、困ったように周助は微笑った。てっきり肯定する言葉が返ってくると思ってたから、少し、ムッとする。
「そんな顔しないで。未来(さき)のことなんて誰にもわからないんだからさ。それでも、肯定して欲しい?嘘になるかもしれなくても?」
 俺を優しく抱き締めながら、言う。だから。本当はもっと沢山反論したかったけど。いい言葉が浮かんでこなくて。
「今の願望を俺は訊いてるんスよ」
 呟くようにして言い、その腕に体を預けた。クスリという微笑い声が、耳元にかかる。
「願望、か。条件次第では、イエス、かな」
「……じょう、けん?」
「そう。――10年後も、君が変わっていなければ」
 一緒に、居たいな。一緒に居よう。真面目な声で、呟く。腕が解かれたから。俺は立ち上がると、今度は向かい合うようにして座り直した。
 額を合わせ、見つめ合う。
「ねぇ。周助は、俺が変わるとでも思ってるの?」
「………変わらない、だろうなぁ」
「じゃあ、俺たち、10年後も、その先も、ずっと一緒に居られるっスね」
 俺の言葉に、曖昧に微笑う。
 それでもまだ、肯定してくれないんだ。
 また少し、ムッとする。その俺の顔に、周助はまた、困ったような笑顔になる。
 そんな表情(かお)、見たくも無いから。
「いいっスよ。俺が離れませんから」
 言い切ってニッと微笑うと、それを証明するかのように、俺は周助にキスをした。
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