178.歯(不二ナン) |
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「………っ」 首元に痛みを感じ、思わずその体を突き飛ばしてしまった。 「いてっ」 向かいの壁に頭を打ち付けたのか、痛みに顔を歪める。でも、先に痛かったのはこっちだし。って。 「まさか南ちゃん、痕、付けた?」 確認するように、首に触る。と、僕の目の前で痛みに歪んでいた顔がニヤけたそれへと変わっていった。 「吸っちゃいねーよ。約束は守るタチだからな」 ……どこが。 南ちゃんが約束を守った例しなんて一度もない現に今だって。 「痕をつけるなとは言われてねーぞ。吸いつくな、とは言われたけどよ。だから、別の方法で痕つけてみただーけ」 「………歯型?」 「ピンポーン」 僕の呟きに、南ちゃんはニッと歯を見せて微笑った。確かに痛みを感じた首元には、唾液のぬめりと共に、凸凹した感触がある。 「なっ。約束は守ってるだろ?」 勝ち誇った笑みで、僕を見つめる。 ヤバイな。このあと、リョーマを起こして遊びに行きたいのに。また、機嫌を損ねられる。 「だったらバカ息子んとこなんて行かなきゃいーじゃねぇか。どうせ昼まで起きてこねーんだ。一発ヤらせろよ」 僕の肩を掴み、また、壁に押し付ける。キスをしようと顔を近づけてくるから。 「ダ・メ」 「いでっ」 呟いて背伸びをすると、その鼻に噛み付いてやった。それこそ、痕がつくまでに。 「何しやがるっ」 「お返し、だよ。さて。南ちゃんがその歯型の言い訳をどうやってするのか、楽しみだな。見れないのが残念だ」 シャツのボタンを上までしっかりと閉め南ちゃんに付けられた痕を隠すと、その前をすり抜けて階段へと向かう。 「ちょっ、おい、周助!」 「何?」 笑顔で振り返ると、南ちゃんは少したじろいだようだった。怒ってやがんな、と呟く。それを聞こえないフリで、僕はもう一度、何、と訊いた。気を取り直すように、咳払いをする。 「次こそはぜってーヤってやっから、覚悟しとけよ」 僕を指差していうと、南ちゃんは不敵に微笑った。似たような笑みを、南ちゃんに返す。 「じゃあ、その前に。僕が南ちゃんを犯ってあげるよ。僕がいつもどんな風にリョーマと犯ってるのか、知りたいでしょ?」 ふふ、と微笑うと、唖然としている南ちゃんを後にして、僕はリョーマの部屋へ続く階段を上がった。 |
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