182.制服(不二佐)
「ごめん。まだ整理できてなくて、散らかってるけど」
「別に構わないよ。突然押しかけたのは俺だし」
「言ってくれれば、僕の部屋だけでも綺麗にして置いたのに」
「…………」
「佐伯?」
「これ、青学の制服か?」
「うん」
「あまり変わらないな。六角(俺ら)のと。違うのは、校章だけか」
「そうなんだ。だから、別に新しいのを買わなくてもいいって言ったんだけどさ。母さんが既に用意しちゃってて」
「……でも、本当に行くんだな」
「うん」
「何も、こんな中途半端な時期に引っ越さなくても良いのにな」
「しょうがないよ。それに、もう決まったことだし。今更」
「それはそうだけどさ。……もう、会うことも無いんだろうな」
「何で?その気になればいつでも会えるよ。会おうよ、絶対」
「そうは言うけど。引っ越していった友達はみんなそう行ったけど、一年も経たずに音信不通だ。きっと、不二もそうなる」
「僕が行くかどうかが心配なら、佐伯が来ればいいよ。僕の家族、皆佐伯を気に入ってるからさ。夏休みとか、泊まりにおいでよ」
「申し出は嬉しいけど。やめておくよ。不二の家族は仲が良すぎる。その輪の中にいると、時々、淋しくなるからさ。やっぱり、家族の絆ってヤツには勝てないんだなって」
「何言ってんの。統計によると、小中学生は親よりも友達といる時間の方が長いんだよ」
「でも、不二は別だろ?由美子さんはともかく、裕太くんは学校でも一緒だ」
「……そうだけど」
「不二は、俺よりも裕太クンのほうが好きなんだろ?」
「何言ってんの。家族と友達を同じ枠で比べられるわけ無いよ。裕太は好きだけど、友達の中では佐伯が一番好きだよ」
「……友達、か。俺は不二の全ての一番になりたいんだけどな」
「ん?何か言った?」
「何でもない。……それより、俺が遊びに行くのはいいけど、そんなに頻繁にいけないぞ?金も無いしな」
「いいよ。自分で会いたいと思ったら僕が会いに行くから。佐伯は、佐伯が会いたいと思った時に僕の所に来ればいい。……それと、僕たちが自分のお金を使わなくても、年に最低2回は会えるしね」
「?」
「夏と春の大会だよ。僕は青学でもテニスを続ける。だから、関東で会おう」
「……そうだな。会えるといいな」
「会えるといい、じゃなくて、会うんだよ。関東でも、全国でも。ね」
「全国か。随分大きく出るな」
「だってそうすればその分佐伯と沢山会えるしね」
「不二…。まぁ、その前に、レギュラーにならなければどうしようもないけどな」
「大丈夫。僕は佐伯より強いんだから。それより、佐伯の方こそ、大丈夫なの?」
「……不二に会うためなら、努力は惜しまないよ」
「うん。じゃあ、約束」
「ああ。約束。……あ」
「何?」
「でも、大会がなくても、会いたくなったら会いに行っていいんだろ?」
「勿論だよ」
「………不二」
「ん?」
「いいや、何でもない」
「そう?なら、いいけど。……佐伯」
「うん?」
「離れても、ずっと僕の好きな佐伯でいてね」
「何言ってんだよ。俺は変わらないよ。ここが変わらない限りな」
「うん」
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