200.崩壊(不二幸)
「駄目だよ、幸村。体に障る」
 深く唇を重ねようとする俺の体を押しやると、不二は少し乱れただけの服を整えた。ベッドから降り、俺の髪を梳くようにして撫でる。
「帰るのか?」
「君が倒れたと聞いたから来たんだ。なんか、これ以上僕がここにいると、余計に君の症状を悪化させてしまいそうだからね」
 苦笑しながら言うと、不二はゆっくりと俺から手を放した。不二手のから、少しずつ俺の髪が滑り落ちる。
 それがまるでカウントダウンのように、俺には感じられた。何かが確実に崩れ落ちる、感覚。
「また、来るよ。今度は幸村が元気なとっ…」
 不二の言葉が言い終わる前に、その距離が離れる前に。俺は手を伸ばすと、有りっ丈の力で不二を引き寄せた。不二が反応を返す前に、深く唇を重ねる。
「ゆき、むら?」
 驚いたような不二の声。だが、俺はその顔を見ることは出来なかった。それだけで息が上がり体が火照っていたから。
 何とか呼吸を整えようとするけれど、深呼吸を繰り返せば繰り返すほど体は熱くなっていく。
 ああ、まただ。また、壊れてしまった。
「不二、頼む。俺を助けて…」
 その体に縋りつき、誘うような声で言う。不二は俺の髪に触れると、仕方がないな、というように苦笑した。俺を壊したのは、他でもない不二なのに。
「体、壊れてもしらないよ?」
「もう既に、俺の体は壊れてる」
「そうだね。僕が壊したんだ。君が、僕を求めるようにするために、ね」
「なっ…」
 驚きに体を硬直させた俺に、ふ、と口元だけを歪めて微笑うと、不二は俺が求めている以上のキスをした。
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