215.キライ(不二切)
「不二サンって、いつからオレのこと好きになったんすか?」
「うん?」
 オレに背を向けていた不二サンは、もぞもぞと向きを返ると、頬を掴んでキスをしてきた。オレも、舌を絡めてそれに応える。
「だって、不二サン。オレのことキライだったんでしょ?オレもキライだったし」
「……じゃあ、赤也はいつから僕のこと好きになったの?」
「…………忘れ、ました」
 いいながらも、オレはその時のコトを思い出し、顔が真っ赤になってしまった。それがバレないように、不二サンに体を寄せ、深いキスをする。
 ずっと、キライだった。天才と呼ばれ、大した努力もしないのに真田副部長のライバルである手塚サンの隣にいるこの人が。しかも、自分の強さに自覚が無いから余計に腹が立った。それだったら、まだ丸井先輩の方がマシだ。
 それが、あの日の試合で変わった。
 この人は、オレを救ってくれたんだ。いつしか相手を傷つけることしか考えなくなっていたオレを。無自覚の強さと、その奥にある優しさで。
「オレのことは、いいっスから。それより、不二サンのことを聞かせてくださいよ」
 その白い首筋に顔を埋め、強めに噛み付く。痛いはずなのに、不二サンは声も上げず、オレの頭を優しく撫でた。
「僕は……忘れたよ。そんな昔の話」
 ふぅ、と息を吐きながら言うと、不二サンはオレの髪を掴み、首筋から引っぺがした。代わりに、オレの唇に不二サンの唇を押し当ててくる。
「なんてこと言って、実は今でもオレのことキライだったりしません?」
「ふふっ」
 オレの言葉に妖しげに微笑う不二サンに、赤かった顔は一瞬にして青ざめてしまった。それを見た不二サンが、今度は優しく微笑う。
「なんてね。冗談。スキだよ、赤也」
 だからもう、昔の話なんてどうでもいいでしょう?言う代わりに、不二サンはもう一度唇を重ねると、鎮まった熱を呼び起こすようにオレの身体に触れてきた。
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