231.1.5倍(不二幸) |
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「――1.5倍の愛をあげるからさ」 「……1.5?」 「そう。1.5倍。だから、機嫌直して」 「……詳しく言うと?」 「何?」 「1.5倍の愛」 「うーん。そうだなぁ。例えば、今は週3くらいのペースだけど。毎日、それもこれまでより30分早く、君に会いに来るよ」 「…………」 「何?」 「別に。不二の俺への愛とはそんなものなんだな、と思っただけ」 「うん?」 「だって、そうだろ。毎日来る、30分早く来る。その程度しか変わらないということは、もともとの不二の愛が少ないと言うこと。違う?」 「……違う、かな」 「どこが」 「本来なら、1.5倍だって大変なんだ。僕の君への愛は、計り知れないからね。ただ、君に迷惑をかけない範囲で出来ることはまだあるし。でも、それが今の1.0000000001倍の愛だって言ったとしても、君はなんとも思わないでしょう。だからといって、2倍と言えるほど大きな事をするわけじゃないし。だから、1.5って言う数字を使ってるんだよ」 「……言ってることが、よく分からない」 「うん。僕も、自分で何を言ってるのか分からなくなってきたよ。まぁ、1.5倍って言うのは、比喩的な表現で――」 「その、俺に迷惑がかかる、と言うのは?俺は不二が毎日来ることを迷惑だとは思わないが」 「本当に?僕が毎日学校をサボって、君の隣に居ても、君は気にしない?」 「……する、かもしれない」 「でしょう。本来の『1.5倍』なら、それくらいしてあげるべきだとは思うけど。それで君が困るんじゃ、僕まで困っちゃうからね」 「……そう、か」 「うん。そう」 「………ちなみに。2倍だと、どうなる?」 「君を病院から連れ出すかな」 「手術していないのにか?」 「余生を2人きりで過ごすよ。それで、君が死んだら、僕も死ぬ」 「……………」 「幸村?」 「不二の、俺への愛って。案外、大きいんだな」 「何を、今更」 |
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