232.ホクロ(不二跡)
「泣き黒子のあるヒトは、泣き虫だって。当たってるよね」
 俺の目から滲んだ涙を舌で掬うと、不二は微笑いやがった。それが頭に来たから、俺はその頬を両手で包むと、思い切り濃密なキスをしてやった。
「……ほら、また」
 だがそれは逆効果だったようだ。不二はまた微笑うと、左目の涙も、唇で吸い取った。
「これは生理的なもんだ。涙もろいのとは違う」
 そのまま唇を下げてこうようとしやがるから、俺は不二の額を押しやると、枕に顔を埋めた。自分でキスをするのはいいが、不二からキスをされるのは、今はムカつくだけだった。
「まぁ、これは冗談だけど」
 耳元でクスリと微笑う。顔を上げると、それを待っていたかのように、唇が重なった。
「僕が居ない夜は、いつも淋しくて泣いてるんでしょう?」
「っ誰が…」
「爺やから聞いたよ。眠れないからって君に頼まれてホットミルクを持っていくと、いつも目が赤く腫れてるって」
 俺を仰向けにし、微かに赤くなった頬を確かめるように覗き込んでくる。
「あの野郎っ」
 目を逸らし、呟く。すると、不二はクスクスと笑い出した。
「やっぱり、泣いてるんだ」
「………?」
「爺やはね、僕にこまめに君の元を訪れてくれって言っただけだよ。言うわけないじゃない。そんな跡部の恥ずかしい姿」
「………っ。てめぇ、謀ったな」
 嬉しそうに微笑う不二にムカつきながらも、俺の頬は怒りではない感情で赤くなっていった。顔の熱に慌てて顔を背けよとするが、不二の両手にそれを阻まれた。また、唇を重ねられる。
「ふふ。でも、嬉しいよ。そんなに僕のことを想ってくれてるなんて」
「…………」
「跡部、怒った?」
 少し弱気な笑みを見せると、不二は触れるだけのキスをした。
 だが別に、俺は怒っているわけではなかった。ただ、少し納得が行っていないだけだ。だから、俺は不二の首に腕を回すと、顔を見られないように思い切り抱き寄せた。耳元に唇を寄せる。
「……嬉しいなら、もっと頻繁に会いに来やがれよ」
 囁くと、何故か俺の頬を生温かいものが伝った。
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