235.破れてしまった(不二幸)
 散らばった紙を拾い集め、きちんとした文章になるように並べる。
 暫くの間不二はそれを黙って見ていたが、突然近付くと机の上を手で荒々しく払った。折角並べた紙がばらばらになって床へと落ちる。
 再び拾い集めるためにベッドから降りる俺に、不二は感情を押し込めた視線を向けると、紙に伸ばした手を乱暴に掴んだ。俺の手を引き上げ、乱暴なキスをする。
 そうして俺をベッドへと倒すと、そのまま病室を後にした。
 深とした部屋。上半身だけベッドに預けた状態で。じ、と変わらない天井を見つめる。足を動かすと、紙に触れたのか、かさ、と小さな音がした。
 不二が怒ったのも、無理はない。床に散らばった欠片たちは、俺の書いた遺書なのだから。
 死ぬ気はないが、生きていられるとも到底思えなかったので書いた。自己満足だ。誰にも見せるつもりはなかったのに、不二に見つかった。そして――。
 体を起こし、紙を拾い集める。ベッドに戻りそれを並べていると、何故か涙が溢れてきた。
もしかしたら破れてしまったのは別のものなのかも知れない。開け放たれたままのドアから聞こえてくる雑音に、そんな予感がした。
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