238.止まらない(不二幸)
 突然、涙が溢れ出た。原因はいまいちはっきりとしない。
 ここのところ症状が酷くて弱気になっていたからなのかもしれないし、夜中突然目が覚めてひとりだということを実感したからなのかもしれない。それとも、真田たちも不二も最近顔を見せてくれないからかも。全部が原因のような気もするし、どれも違うような気がするが。実際のところ、原因なんてどうでもいい。今、泣いているという事実が、俺にとって問題なんだ。
 こういうとき、不二は必ずと言っていいほど傍に居てはくれない。夜中だからと言ってしまえばそうなのだが、恐らく、昼に泣いていても来てはくれないだろう。
 ぼうっとしているとき、不意に不二に会いたいと思うときがある。窓から吹き込んでくる風に、不二の温もりが恋しくなるときがある。そう言う時は、必ず、不二は俺の前に現れてくれる。夜中なら、夢の中で。
 だけれど、こうして俺が涙を流しているときは来てくれない。特に俺が不二に会いたいと思っていないからなのかもしれない。誰でもいいから傍に居て欲しい。そう思っているからなのかもしれない。
 兎に角、俺は今すぐにこの涙を止めなければならない。そうしなければ、不二は俺の前に現れてくれないのだと分かっているからだ。
 誰でもいい、とは思っても、出来ることなら不二に会いたい。ただそれは、どうしてもというわけではないから、やはり不二は現れてはくれない。
 だから、俺は泣き止まなければならない。涙を止めて、心から、不二に会いたいと、思わなければならない。
 なのに、どうしてだろう。今夜はどうも、涙が止まらないみたいだ。俺は、不二には会えないみたいだ。
 どうしようか。余計に、涙が溢れてくる…。
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