240.徹夜(不二ジロ)
 卵が先か、鶏が先か。なんてよく言うけれど。彼の場合は…多分、睡眠が先なのだと思う。というか、そう思いたい。僕の所為で彼が日中睡眠についているとだけは、思いたくない。
「眠くないの?」
「授業中、寝てっからヘーキ」
 ベッドの中、僕の隣で布団から顔を出すと、彼は言った。僕をチラリと見ただけで、視線はすぐにテレビに戻る。
 真っ暗な部屋、明かりは彼の視線の先にあるテレビだけ。しかも、そこに流れているのは、これから眠るはずの時間を起きて過ごす為にと、彼がわざわざレンタルしてきたホラームービー。
「ねぇ。明日、午後から部活あるんでしょう?ちゃんと寝ないと、身体壊すよ?」
「だって、折角不二といるのに眠ったらもったいねーじゃん。大丈夫だって。部活んとき寝っからさ」
 怖いのか、画面に釘付けのまま、僕に言った。昼間とは違うはきはきとした口調に、思わず溜息を吐く。
 君は良いかもしれないけど、僕が寝不足になるんだよね。まぁ、昼間に欠伸ばかりされるのも嫌だからと、夕方くらいから誘う僕も悪いのかもしれないけれど。
 でもだからって、全部僕の責任にするのは可笑しいと思う。うん。僕を怒るのは可笑しいよ。
「ねぇ、慈郎。もう寝――」
「不二。なんかさ。なんもしてねーけど、すっげー、楽しいな」
「………そう、だね」
 まぁ、いっか。寝不足になったり、跡部に怒られたりするのも長くてあと1ヶ月くらいだろうし。それくらいなら、まだ耐えられる。
 でも、この彼の生活が本当に僕のせいなのだとしたら、僕がどうにかすれば変えられるのかな。
「不二っ」
「ん?」
「このまま不二も夜型人間になれるといいな」
 ………はぁ。
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