241.発見(不二リョ) ※365題『18.自慢のコレクション』の続き
「……まだ、やってたんだ。こんなこと」
 腹へったという俺に、何か作ってくるね、と先輩は出て行った。その隙をついて、俺は再び四次元ポケットのような先輩のクローゼットを開けた。
 前に見つけたときよりも、ファイルの数が増えている。あれから一ヶ月しか経ってないのに、二冊も。勿論、その分厚い写真の中は俺の写真ばかりが気持ち悪いくらいぎっしり詰まっている。
 気持ち悪さ半分、恥ずかしさ半分ってところか。
 はぁ、と溜息を吐いてファイルを閉じると、俺はそれを元の場所に戻した。
「ん?」
 と、その隣に比較的薄い、黒いファイルを見つけた。俺の写真の入っているファイルよりも古びたというか使い込んだ感じのそれ。恐る恐る手にとり、開いてみる。
「…………っ!」
 その中を見た俺は、反射的にファイルを閉じてしまった。その時うっかり親指を挟んじゃったけど。そんなことよりも顔の熱さと軽い目眩が酷くて。
 俺が居なくて寂しい時は使っているのだと、最初にファイルを見つけたときに先輩が行っていた。浮気するよりはいいでしょ、と。確かにあの時は、浮気されるくらいなら俺の写真を使って抜いてくれる方が良いとは思ったけど。でも。
「これじゃ丸っきりエロ本じゃん」
 もう一度、恐る恐る、ページを開く。
 いつどうやって撮ったのかは知らないけど、全ページが俺のきわどい写真で埋め尽くされていた。その隅には若干汚れも見えたりして。ああ、本当にこれを使ってるんだな、なんて要らない実感。
「ってか。なんつーか…」
 浮気されるのは絶対嫌だし、知らないやつで抜かれるのも嫌だけど。でも、なんか、ここまでされると嫌だ。何が嫌だって、なんか、だってそれって…。
「リョーマ。って。あれ?ああ、また見てたんだ」
 部屋に入ってきた先輩は、俺が見ているものを見止めると、悪びれた様子もなく言った。寧ろ、少し誇らしげに。凄いでしょう、と言いたげに。
 ムカつくから。俺は勢いよくファイルを閉じると、それをゴミ箱に向かって投げた。つもりだったけど。比較的薄いとはいえ、比較対照が分厚いファイル。勿論、これだって普通のやつと比べると、厚い。だから、俺の投げたファイルはゴミ箱には届かず、スーッとただ床を滑って行っただけだった。
「投げるなんて、非道いなぁ」
 突然の俺の行動のつもりだったのに、予測していたらしい先輩は、微笑っただけでそれ以上は何も行ってこなかった。ファイルに近づき、それを拾う為にしゃがむ。
「って」
 俺はその隙をついて先輩に突進した。この行動は流石の先輩も予想できなかったらしく、床に強かに頭を打ち付けていた。
 構わず、その身体に跨る。
「何、りょー…」
 顔を向けた先輩の頬を両手でしっかりと挟むと、今できる目一杯のキスをした。そのまま、先輩を抱き締める。
「こんな、ファイル作るくらいなら。俺が相手しますから」
 写真を使ってっていうのは構わないけど。ファイルを作るってことは、それで抜くことを計画してるってわけで。突発的にっていうのじゃない。だったら、それくらいなら、俺に言ってくれれば…。
「でも、だって、リョーマ…」
「学校だとか部活だとか、そういうのはいいっスから。俺がそうして欲しいって言ってるんスから。だから」
 生身の俺としてください。
 恥ずかしくて。呟くと、俺は赤い顔が見られないように、また先輩にキスをした。
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