250.面(周裕)
 いつからか覚えてねぇけど。兄貴の笑顔は貼っつけてあるもんのように見える。毎日毎日、同じ笑顔、同じ優しさ。
 優しいのは、嬉しいけど。時々それが、凄くムカつく。
 見えなくなった本心。そもそもオレに見せてたのかすら分かんないけど。
 ムカつくって思っうから、その顔に張り付いた笑顔を剥ぎ取りたくなる衝動に駆られる。
 笑顔の下の兄貴はどうなってるのか、知りたい。あの余裕がもし強がりから来るもんだったら。オレにだって、少しは兄貴より勝る所が見つかるかもしんねぇって。
 けど。どうやったら取れるのか知らねぇし。そう思った瞬間、恐怖みたいなもんが体中を駆け巡る。
 きっとそれは、警鐘だったんだ。絶対に、兄貴の仮面を壊しちゃいけねぇって。
 知らなかったんだ。それが、制御装置だったなんて…。

「っ、にき。も、やめ…」
 俺も虫の居所が悪かったから。好奇心も手伝って、いい加減ムカつく兄貴の笑顔を剥ぎ取っちまった。
「何言ってるの。体はこんなに喜んでるのに」
 仮面を剥ぎ取られた、兄貴の本心。妖しい輝きを放つ蒼い眼が、オレを見つめてニヤリと笑う。
 こんな…これが、兄貴だなんて。
「ねぇ、裕太。まさか裕太のほうから誘ってくるれるとは思わなかったよ。こんなことなら、隠しておくんじゃなかったな。こんな欲望」
「くっ、ぁ…」
 クスクスと微笑いながら、何度も最奥を突いてくる。手足を縛られているオレは、その仮面の下で充分すぎるほどに塞き止められていた兄貴の欲を、受け止めるしか無かった。

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