265.壊れ物注意(不二幸)
 いつも不二は俺を腫れ物のように扱うが。俺は不二が思っているほど弱くもなければ、綺麗なものでもない。もっと乱れてしまいたいと思う時だってある。壊して欲しいと思うときが。だから不二。偶には…。
 そこまでで。僕は彼の口を自分のそれで少し荒っぽく塞いだ。驚いた顔で僕を見上げた彼に、静かに首を横に振る。
「不二…」
「違うんだよ、幸村」
 壊れやすいのは君じゃなく、僕の理性なんだ。もし僕の欲望のタカが外れたら。何て思うと、怖くて。どうしても、今一歩、踏み込めないでいるんだよ。
「だから、君の所為じゃないんだ」
 ごめんね。そう呟いて、またキスをする。ただし、今度は、優しいものを。なのに、今度は彼のほうから深く侵入してきた。僕の理性を壊すように、欲望を誘うように、舌を動かして。
「…き、むら。駄目だって」
「何故?」
「だから――」
「何故、不二の理性が壊れることがいけないんだ?」
 俺はそれでも、いいや、寧ろ壊れてくれた方が良いのに。少し辛そうな顔をすると、彼は言った。不二はいつもそうやって本性を隠すんだな。俺にさえ。
「……幸村」
「俺なら、大丈夫だから。知ってるだろ。俺が立海で部長をやっていることを。俺は不二が思うほど柔じゃないさ」
 だから。呟くと、彼はまた深く口付けてきた。誘うように、躰を密着させて。
「後悔しても、知らないよ?」
 伝えられる熱に、僕の息も上がる。荒い息で問うと、彼は、ニッ、と微笑って言った。
「俺はどんな不二でも受け止めてみせるさ」
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