277.手と手(不二跡)
 不二は、よく俺の手にキスをする。理由を訊くと、俺の手が好きだから、だそうだ。そりゃそうだ。嫌いなものにキスをする奴なんていねぇ。
「跡部の指、細くて、長くて。綺麗だよね。女の人の手みたい。性格、全然反映してないよね」
「うるせぇよ」
 手の甲に唇を触れたままで喋りやがるから。くすぐったさに、俺は何とか不二から手を引いた。逆に、不二の手を掴み、俺がキスをする。
「てめぇの手は、細くて長げぇが、綺麗とは言い難いな。ごつごつしてやがる。面は女みたいなのにな」
「そりゃあ、だって。男の子だもん」
「じゃあ何か。俺様は男じゃねぇってか」
「そうは言ってないよ」
 クスクスと微笑うと、触れていた不二の手が裏返った。逃げるよりも先に、顎を掴まれる。
「……っ」
「僕の手は君を守る為にあるんだから、綺麗じゃなくても良いんだよ」
 唇を離し、かわりに額を重ねると、不二は微笑った。その顔からは想像もつかない力強い手が、俺の背にまわされる。
「……そんなに俺様を守りてぇんなら」
 言って強く抱き締めている左手をとると、指を絡めた。それを、俺と不二の間に持ってくる。
「跡部?」
「しっかりと、繋いでろよ」
「………うん」
 頷いて俺の手の甲に唇を落とすと、不二はしっかりと手を握り返してきてくれた。
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