280.毛布(不二橘) |
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どうも体に重さを感じると思った。 「ふ」 眼を開けて、ぼんやりとした視界に映った光景に、僕は思わず微笑ってしまった。毛布をかけるような形で僕の体に手を乗せ、彼は眠っていた。 「それじゃあ、君が寒いでしょう」 彼を起こさないように、静かにその手を退けると、毛布の半分をその大きな体にかけた。 心なしか、丸まっていた彼の体が伸びる。それを見届けると、僕は眼を閉じた。 暫くして、また、重み。 眼を開けると、さっきと同じ光景が僕の目の前に広がっていた。 もう一度、毛布を半分渡す。 のに。 「ん」 小さく声を漏らすと、彼は眼を瞑ったままで僕の体に毛布をかけた。 寝惚けてるな。きっと、自分が僕の分の毛布も掛けてしまっていると思っているのだろう。だからって。僕はちゃんと半分は毛布に入っているのに。 でもこれが、きっと、彼の優しさなんだろうな。 少々、間の抜けたものではあるけれど。 「しょうがないな」 呟いて、微笑う。 僕は毛布を半分彼に掛けると、そのまま、体を寄せてぴったりとくっついた。彼を、そっと抱き締める。 「……じ」 回した僕の腕に手を重ねると、彼は僕の名前を呼んだ。 「うん」 微笑みながら頷く。眠っているのだから彼には見えるはずもないのだけれど。僕の腕をぎゅっと掴むと、彼も微笑った。 |
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