285.まなざし(不二橘)
「最近、似てきたらしいぞ」
「何?」
「杏に言われた。俺とお前の眼が似てきているってな」
「……ふぅん」
「興味なさそうだな」
「そうでもないよ。ただ、ちょっと、ね」
「何だ?」
「君の僕や杏ちゃん、それに部員達に見せている眼には憧れてる所があったから、ちょっと複雑」
「何だ、それは」
「見守るようなその優しい眼差しにね、憧れてるの」
「……不二だって」
「そうでもないよ。君のは自然と出来てるんだろうけど。僕のは故意にそうしてるだけだから。……どっちが似たのかな?」
「どっちだって構わないだろ」
「構うよ。僕が君に似るのならまだしも、君が僕に似たら大変だよ。ほら、僕って案外我侭じゃない」
「そうだな」
「あ、同意しちゃうんだ。まぁ、いいけど。だから、さ。僕に似てきたってことは、君から多少なりと優しさがなくなっちゃったってことにな、ら…」
「ならないな。ならないだろう」
「そう言うと思った」
「一つ、言い忘れていたが」
「うん?」
「杏が似てると言ったのは、俺と不二が二人で話しているときの眼らしい」
「うん」
「だからもし、どちらかが似たというのではなく、互いに似たのだとするなら――」
「……僕は君に優しくなって、君は僕に我侭になってるってこと?」
「そうは思わないか?」
「…………半分だけ」
「半分?」
「だって、僕は君に多少は優しいだろうけど。それでもやっぱり君は優しいから。我侭だって感じたことないし」
「それは、そう感じなかっただけだろう」
「何。我侭にしてる自覚あるの?」
「………多少はな」
「……………へぇ」
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