293.包装(不二橘)
「器用だよねぇ」
「なんだ?」
「それ」
 頬杖をついていた手で、テーブルの上に置かれた箱を指差す。綺麗にラッピングされたそれは、彼の顔には似合わない可愛らしいものだった。
「いつも自分でやってるの?」
「ああ。杏のだけな。他の奴が包装した奴だと、すぐにバレるんだ。どうやら俺のやり方に特徴があるらしいんだが」
「へぇ…」
「……冷淡な反応だな。いつもなら俺の癖なんてすぐ見抜くくせに」
 箱を手に持つと、彼はそれを僕の前に置いた。どこに特徴があるのか教えてくれ。そんな顔で僕を見つめる。
 でも。
「分からないよ。だって僕、君からプレゼント貰った事なんてないからね」
 まぁ、物じゃなくて体ならあるけど。独り言ち、彼に箱を返す。僕の呟きがきこえたらしく、見ると、彼はラッピングされた箱と同じくらいに顔を真っ赤にしていた。
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