295.チンピラ(不二切)
「別れろってさ」
「………はい?」
 駅から不二サンの家へと向かう途中。何の前触れもなく、軽い調子で不二サンは言った。聞き返すオレに、何故か不二サンは微笑った。
「母さんは別に何とも思ってないみたいなんだけどさ。姉さんがね。君がチャラチャラしてるって言うんだよ。チンピラみたいだって」
 失礼だよね。僕が選んだヒトなのに。クスクスと微笑いながら言うけど。オレとしては笑い事じゃない。
「……で。不二サンはどうするつもりなんスか?」
「うん?」
「だから。オレと別れるんスか?」
「うーん」
 腕を組み、足を止める。悩むって事は、そういうことなのか?内心ビビリながら、オレも足を止めた。不二サンが、オレの頭のてっぺんから足の先までゆっくりと視線を動かす。
「確かに、チンピラに見えないこともないよね。まぁいいや」
 独り言ちるように言うと、不二サンは組んでいた腕を解き、オレの手を取って再び歩き出した。
「え?へ?ちょっ、まぁいいって…?」
「ぱっと見の君の印象が気に入らなかっただけだと思うからさ。ちゃんと見れば、赤也が見た目通りの奴じゃないって姉さんも分かってくれるよ。何しろ、姉さんは普通のヒトじゃないからね」
「???」
 良く分からない日本語を並べ、不二サンは足を速める。オレは訳が解からないながらも、取り合えず別れるつもりはないということだけは分かったので、大人しく不二サンに歩調を合わせた。
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