296.魚(不二橘)
「可愛いなぁ。けど、食べちゃうんでしょう?」
「……可愛いか?」
「可愛いよ。でも、食べちゃうんだよねぇ」
「お前がその為に釣って来たんだろう?手塚と」
「あー。やっぱり怒ってるんだ。手塚と釣りに行ったこと」
「……少しな」
「少し?嘘だぁ。もの凄く怒ってるでしょ。だって杏ちゃんが言ってたよ。僕が手塚と釣りしてる時間、君はずっと携帯をパカパカやってたって。部活中なのに」
「杏のやつ…」
「怒らないであげてよ。純粋に心配してたんだから。僕と何かあったんじゃないかって。だから、手塚と釣りに行ってたんだって言っといたけど」
「……けど?」
「言ったら、怒られちゃったよ。お兄ちゃんは人一倍心配性なんだから、そう言う不安にさせるようなことしちゃダメ!ってね」
「ふ」
「って。あれ?」
「何だ?」
「いやぁ、杏余計なことを…、って感じの顔、すると思ったんだけどな」
「余計なことじゃないんだから、そんな顔する必要ないだろ」
「あら、そう」
「何だ?」
「別に。そう、だからさ、君が心配してると思ったから、僕は今日のうちにちゃんとこうして君の家に来て上げたわけですよ」
「言ってる意味がよく分からんが?」
「だって、明日まで連絡無かったら、もしかして泊まってるんじゃないか?とか妙な妄想するでしょう、君は」
「………不二の場合、日帰りでもありそうだけどな」
「……………。ま、兎に角。愛着が湧く前に、ちゃっちゃとさばいちゃいましょうか」
「結局、食べるんだな」
「だって、君の包丁さばき見たいし。ってか、その為に手塚なんかと釣りに行ったわけだし」
「なんか、か」
「そう。なんか、だよ」
「……分かった。じゃあ、俺の包丁裁きを披露してやるか」
「うん」
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