「ねぇ、見て見て」 「なに?」 「ほら、不二くん」 「窓に座ってんじゃん。あそこベランダないでしょ?あっぶなーい」 「それもそうだけど。そうじゃなくって。ほら、あれ」 「……鳩?」 「なんか、親しげじゃない?動物と話とか出来ちゃったりして」 「なーに馬鹿なこと言ってんのよ。ほら、行くよ」 「えっ、ちょっ…」「……だってさ」 彼女達の足跡が消えるのを確認してから、僕は彼に呟いた。膝の上に乗っている彼は、どんな感情を込めてか知らないけど、とりあえず鳴いて反応は示してくれた。 「僕ってそんなに不思議なイメージなのかな」 まぁ、窓辺に座ってるのは普通じゃないかな。彼女の言う通り、ベランダは無いわけだし。 「ま、いっか。そういうとこ、好きみたいだしね。柳は」 良く理解らないから、観察しがいがある。なんて、乾みたいなこと言ってたし。 僕のどこを好きなのか聞いたとき、少し頬を赤くしながら言っていた彼を思い出して、僕は微笑った。 「ああ、そうだ」 膝の上で動き出した鳩に我に帰った僕は、その足についているカプセルから紙を取り出した。 「君には悪いけど。今時伝書鳩なんて流行らないよ」 古風なんだかなんなんだか。彼は良く理解らない。 ああ、同じなんだな。僕も、彼のそんな所、好きだったりもするわけだし。 「理解らないから好きだなんて、変なの」 自分に言ってるのか、遥か向こうの彼に言ってるのか。自分でも良く分からないけど。呟いて、僕は微笑った。 そして、彼からのメッセージを見て、更に笑った。 「……知ってるよ、そんなの」 小さな紙の中央に、小さく書かれた、一言だけのメッセージ。僕はそれを大切に胸ポケットにしまうと、用意していた紙を取り出した。無論、彼に返事を書いて、膝の上の使者に運んでもらう為に。
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