301.銃(不二リョ) ※『105.水』その後
「わっ」
「へっへーんだっ」
 後頭部に一発。身を竦めた先輩に、俺は笑った。
「……越前くん、それ」
「今日という今日は、俺優勢でいかせて貰いますから」
 声を張り上げて言うと、引き攣る先輩の顔目掛け俺は弾というか、水を噴射した。
 けど。
「甘いな」
 その水が届く前に、先輩は軽々とよけてしまった。というか、俺の狙いが殆んど外れてたっていった方が正しいのかもしれない。
 でも、避けられても俺は安全。先輩からの反撃を食らう心配は無い。何たって、不二先輩との距離は10メートルは離れてるんだし。
「甘いのはそっちなんじゃないっスか?そっからどうやって反撃するつもりっなんスか」
 言いながら、左手をシャコシャコと動かして空気を水のタンクに送る。
 そう、これは数年前に日本で流行った水鉄砲。こうすることで、空気圧を使って遠くに水を飛ばす。もっとでかい奴はギリギリまで溜めれば20メートルは余裕で飛ぶらしい。
 まぁ、俺の小遣いじゃ10メートルの奴が限界だけど。
 それでも、先輩を狙うには充分だ。それに余り遠くても狙いが定まりにくくなるし。
「そうだなぁ」
 例えて言うならマグナムみたいな俺の銃に対して、先輩は護身用の小型の銃。何たって、駄菓子屋の水鉄砲。勝ち目は無い。
 ただ、先輩がすばしっこいから、長期戦は否めないけど。でも、既に一発入れてるし。
 今日こそは、俺は濡れずに一日を過ごしてやる。
「……って」
 半分上の空で考えてた俺の足元に、パシャと冷たいもの。驚いて先輩を見ると、両手に何か丸いものを持っていた。
「越前くん、戦闘中に考え事とはいい度胸だね」
「先輩、それ…」
「ふふ。そっちが大型銃なら、こっちは駄菓子屋50円の手榴弾だっ!」
「やめっ、あぶっ…」
 本当にどこにそんな収納スペースがあるのか。先輩はポケットから次々に水風船を取り出すと、俺に向かって投げてきた。
 しかも、山なりじゃなく、真っ直ぐに。
「くっそぉ」
 避けながで、銃口が定まるはずもなく。しかもこっちは、避けても足元に水が跳ねて。
 また、今日も駄目か、って。顔面に水風船をくらいながら、思った。
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