302.ファッション（不二リョ）

「……これ、着るんスか？」 「だってさ。しかも、街歩いてその証拠写真を写メしろって。そりゃそうだよね。そんなの部屋で着てたって、押し倒し辛いだけだし」 「は？」 「まぁまぁ。とりあえず、着てよ」 「……アンタも、着るんスよね？」 「姉さんの命令だからしょうがないよね。あのヒトに逆らったら、あとが怖いから」 「へー」 「何？」 「いや、アンタでも怖いって思う人が居るなんて、意外だなって思って」 「そりゃそうだよ。だって僕の黒魔術は、姉さんから教えてもらったんだから」 「……………ねぇ」 「ん？」 「アンタの家って、まともな人間いないんスか？」 「居るよ」 「……自分、とか言いませんよね？」 「言わないよ」 「じゃあ、誰っスか？」 「ん。裕太。でもあれだよね、一人だけまともでも、辛いものがあるよね」 「……………」 「あ。リョーマ、似合うじゃない。うん。可愛いよ」 「……アンタも、何気に似合うんスね」 「そりゃあそうだよ。僕に似合わない服なんて無いからね」 「…服、なんスかね、これ」 「服なんじゃないのかな。だって、身につけるものだし。ほら、後ろ向いて。ジッパー閉めてあげる」 「っス」 「……はい。次、僕の番」 「うぃーっス。……ってかさ」 「うん？」 「何で俺が虎の着ぐるみで、アンタが兎の着ぐるみなんスか？」 「何で？似合ってるじゃない」 「ってか、普通、どっちかって言うと逆な気が…」 「じゃあ、リョーマが着る？ピンク」 「………遠慮しときます」