306.相思相愛(不二橘)
 ああ、僕たちって相思相愛なんだなぁ。
 って。思うことがある。
 例えば、電話をして。 ワンコールもしないで繋がったとき。
 例えば、会いたいと。彼の家に向かう途中、僕の家に向かう途中の彼と出会したとき。
 例えば、目が合って。どちらともなくまるで引き寄せられるように、唇が重なったとき。
 それは、必然なんて決められたものじゃなく。偶然なんて運みないなものでもなく。互いの気持が共鳴している証拠。
 …だと、思いたい。

「ねぇ、橘」
 呟いて、隣に座る彼を見る。
「……俺も、好きだ」
 僕と同じタイミングで顔をあげると、彼は落ち着いた声でそう言った。
 僕はまだ、名前を呼んだだけないのに。
「………も?」
 見つめて、訪ねる。
「も、だ」
 ふっと優しく微笑いながら言う彼に、僕も似たような笑みを浮かべた。
 自然と、唇が重なる。
「不二」
 甘い息を吐きながら、少しうるんだ目で見つめ、呼ぶ。
「うん」
 その先は分かってるから。僕は微笑って頷くと、伸びてきた彼の手に、指を絡めた。

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