310.予告者(不二柳)
 蓮二は俺以上だ。気をつけろ。
 そんなことを、乾に言われた。これからちょっと柳くんと会ってくる、と部活を抜け出す理由を伝えたら。
 一体何が乾以上なのかと思った。ストーカー度?変態度?憶測は色々だけど、僕は彼の何も知らないから、どうしようもない。せめて乾がもう少しまともな忠告をしてくれたら。気をつけようもあろうに。
 なんて。でも、何が乾以上なのかは、案外直ぐに分かった。
「俺は一週間後、不二に『好きだ』と言う」
 簡単な挨拶を済ませた後、真面目腐った顔で彼は言った。全く予想していなかったその言葉に、僕はただ、はぁ、と間抜けな声を上げてしまった。それでも、僕が返事、といえるかは分からないけれど。とりあえず、何らかの反応を返したをしたことに、彼は満足したようだった。
 で。彼の用事は、それだけだったようで。一週間後に俺はまた青学(ここ)に来て不二を呼び出すだろう、と言うと、踵を返し、さっさとバス停に向かって歩き出してしまった。僕としては、少々腑に落ちなかったが、だからと言って引きとめる理由も用事も何もないから。そのまま、彼の後ろ姿が見えなくなるまで見送った後、再び部活に戻った。
 それにしても。告白予告、しかも自分のをするだけの為に、彼はわざわざ青学まで足を運び、僕を呼び出すなんて。乾の言った通り、乾以上な人だ。何が?と訊かれても、はっきりとは答えられないが。それでも、確かに彼は、乾以上だった。
 一週間後、僕は告白されるのか。ふんふん。なるほど、ね。なんて。独り言ちてみる。返事はどうしようか。暇だし、一度くらいはお付き合いしてみるのも楽しいかもしれない。でも、ちょっと距離が遠いかな。それに彼は男だし。考えは色々浮かぶけど。でも実際はまだ告白されたわけではないのだし。その時になってから考えればいいや、と思った。
 そう思った後で、不図、気がついた。
 来週の今日は、僕たち、合宿で青学にはいないや。
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送