311.とっておきの(不二橘)
「結構上手いじゃないか」
「ま、ね」
 頬杖をついて満足そうに微笑う不二に、俺はフォークを咥えながら、少しだけ顔が赤くなった。それを見て、不二が更に嬉しそうに微笑う。
「だ、だが。料理は出来ないと言ってただろう?」
「だってこれ、ケーキだよ?お菓子、お菓子。君みたいな和食とかそう言ったの、作れないもん。だから、料理は出来ないの」
「………どういう分類の仕方だ」
「そういう分類の仕方、だよ。あ、全部食べないでね。杏ちゃんの分もあるんだから」
 2切れ目に手を伸ばした俺に、不二は慌てて付け足した。分かてる。呟く変わりに、微笑い返す。
「それにさ、こういうとっておきって、やっぱり小出しにするから意味があるんだよ」
「……何だ?」
「だから、今日みたいな日に作るから、意味があるってこと」
「今日…?何の日だ?」
「あれ、可笑しいな。杏ちゃんからチョコとか貰ってないの?」
「………あ」
 そう言えば、今日は2月14日。言う所のバレンタインという奴か。
「だから、チョコケーキなんだな」
「ってさぁ。そう言うのは、もっと早くに気付こうね」
「すまん」
「で。杏ちゃんから、何も貰ってないの?」
「ああ。ただ…」
 今日、これから友達の所寄るから、帰り遅くなるから。あ、お父さんとお母さんも遅くなるって。じゃあ、頑張ってね。
 一緒に帰ろうと誘ったときに、杏はそう言って意味深に微笑っていたのだが。
「へぇ。それって、さ」
「っ」
「こういうことしてもいいってことなんじゃないかな?」
 目の前で、杏と似たような笑みを見せると、不二はもう一度キスをしてきた。
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