319.Baby,Please go Home(不二橘&杏)
「って、言われても、ねぇ…」
「お願い」
「駄目。家に帰りなさい」
「イヤ」
「あのねぇ」
「ねぇ、いいでしょう?不二さん」
「………分かった。杏ちゃんは泊まってっていいよ。かわりに僕が出て行くから」
「え?」
「一緒の部屋で寝るわけには行かないでしょう?」
「なぜ?」
「何故って言われても、ねぇ」
「だってアタシは不二サンの大切な恋人の大切な妹よ。まさか不二さんに限って、手を出すなんてことはしないでしょう?」
「そりゃ、そうだけど。でも、橘、怒りそうだしなぁ」
「兄なんて放って置けばいいのよ」
「……別に、どんな理由で喧嘩したかは聞かないけど。帰った方がいいんじゃないかな。きっと橘も反省してるよ」
「…………兄は悪くないわ。あたしが反省してるの」
「ん?」
「だからこうして不二さんの所に…」
「あ、ごめん。電話だ。……橘から」
「え?」
「……ああ、うん。来てるよ。何か、泊めてくれって」
「ちょっ、不二さん」
「……そう。だから僕がそっち泊まってもいいかな?…だって、同じ部屋で寝るの、心配でしょう?……まさか。でも、ほら。……え?あ、そう。わかった。じゃ」
「…………不二さん」
「ん?」
「何で来てるなんて言うのよ」
「だって隠したって無駄でしょう?僕んとこに来てるって分かってるから僕に電話したんだろうし」
「……それは、そう、かもしれない、けど」
「それに。ちょっとおいで」
「な、なに?」
「ほら、下」
「………あ」
「電話、息切れてたから。きっと走ってきたんだろうね」
「お兄ちゃん…」
「なーんか、妬けちゃうなぁ」
「え?」
「だってアレだよ?僕が橘と喧嘩しても、橘、全然反省しないし。追っかけて来てくれたことないんだよ?それだけ、杏ちゃんを大切に想ってるってことだよね」
「へー…」
「ん、なに?」
「不二さんでも、そんな風に想うんだって思って。てっきり兄は、不二さんばっかりなのかと思ってた」
「まさか。橘が何か話すとしたら、大抵杏ちゃんのことだよ」
「あたしには不二さんのことばかり話すけど?」
「あー、それで、喧嘩したの?」
「……………べ、つに」
「あ。メール。橘からだ。見る?」
「……お兄ちゃん、怒ってる」
「僕にね。それにしても酷いよね、さっさと杏を返せ、だなんて。杏ちゃん、自分で僕のところに来たのにね」
「……ごめんなさい」
「別にいいよ。いつものことだし。じゃあ、これで家に帰れるね?」
「うん」
「良かった。じゃあ、行こうか。お兄ちゃん、待ってるから」
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