325.ゆっくり…(不二幸)
「もう少し速く歩いても、構わないが?」
 俺よりも少しだけ遅れて歩く不二を振り返り、言う。が、不二は微笑むだけで、歩調を速めようとはしなかった。
「だって病み上がりにはつらいでしょう?」
「だからと言って、俺の方が歩くのが速いっていうのは違うと思うが」
「じゃあ、幸村も」
 踏み込んで俺の隣に並ぶと、不二は俺の腕に自分のそれをしっかり絡めた。無理矢理に、ゆっくりと歩く。
「………不二」
「ん?」
「いいや、何でもない」
 楽しそうなその顔に、俺は思わず顔を背けた。触れている腕と、頬が、酷く熱い。
「それにさ、幸村」
 何が、それに、なのかは知らないが、不二はクスクスと微笑いながら言った。
「折角こうして一緒に外を歩けるんだもの。速く歩いたら勿体無いでしょ」
「………そう、か」
「そうだよ」
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