328.空へ(不二橘) ※『314.もういないあなたへ』の続き
「また、そうやって…」
「………ん?」
「いいや、何でもない」
 ぼんやりとした口調で言う不二に、俺は溜息混じりに言うと、その隣に座った。同じように、空を見上げる。
 不二は、いつまでそうしていつ帰ってくるともしれない奴のことを想い続けているのだろうか。それは辛くないのだろうか。俺には分からない。
 などと、最近まで思っていたのだが。
「……それは、俺も同じか」
 俺の存在など気にも留めていないその横顔に、呟く。
 そうだ。それは俺も同じ。
 いつ振り返ってくれるともしれない奴のことを想い続けて。辛くはないはずはない。きっと、それは不二も同じだろう。
 よく似たもの同士が傷を舐めあって、などというストーリーがあるが、俺たちの場合はそれは当てはまらない。不二は似ているということを嫌うし、それに不二が振り返れば俺は不二とは違う立場になる。
 いいや、そもそも不二が振り返ることは、不二の想い人が帰ってくることよりも遥かに可能性の低いことなのだが。
 空ではなく、もう1つの空に視線を移すと、俺は溜息を吐いた。そこに映っているのは相変わらず遥か遠くに居る相手で、俺が入り込んだとしても映りはしない。
 それでも、俺は相変わらずその空の中へ飛び込んで行けることを願い続けている。
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