332.まどろみ(不二リョ)
 もう寝ればいいのに。そう思いながらも、僕は彼を強く抱き締め、その頭を撫でていた。
 彼の目がうとうととまどろんでいる。それでも、決して眠ろうとはしない。だから、僕も眠れない。
 少しでも彼を抱き締める手を緩めたり頭を撫でる手を止めたりすると、背中に爪を立てられる。まるで我侭な猫みたいだ。
「ねぇ、リョーマ」
「…んスか?」
「眠くないの?」
「眠いっスよ。でも、寝たら寝ただけ一日が早く終わっちゃうじゃないっスか」
 そんなの勿体無くて、寝れないっスよ。欠伸まじりに言い、僕の胸に額を押し付ける。暫くそうして動かなかったから。本当に眠ってしまったのではないかと思って、髪を梳いていた手うを止めてみる。
「っ」
「寝ないでくださいよ」
 どうやら、まだ起きていたらしい。背中に、何度目かの爪を立てられた。
「寝てないよ。ただ、リョーマが寝たのかと思ってね」
 顔を上げた彼に微笑いかけ、その額にキスをする。少しだけ嬉しそうに彼は微笑うと、僕を抱き締める腕に力を入れ、再び額を胸に押し付けてきた。
「寝ないっスよ。寝てやらない。勿体無いっスもん」
 どうやらさっきのキスで目が覚めてしまったらしい。顔を埋めたままだから声はくぐもっているものの、はっきりとした口調でリョーマは言った。
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