337.「シアワセ」はどこにある。(不二幸)
「あっち」
 俺の幸せって、一体何処にあるんだろうか。そう呟いた俺に、不二は窓の外を指差すとそう言った。
 てっきり、僕と幸村の間だとか、そういった答えが返ってくると思っていたから。
「は?」
 間抜けな声が漏れてしまった。
 窓の外から俺に視線を戻した不二が、クスクスと微笑う。
「だから。幸村の求めてる倖せ。きっと、この窓の向こうだよ」
 窓を指していた手を下ろし、俺の手に重ねる。そのまま指を絡めると、持ち上げて、唇を落とした。
「不二と俺の間、とは言ってくれないんだな」
「何。そんな答え、期待してたの?」
「………いや、別に」
 いつまでも持ち上げているその手を離すと、俺は窓の外を向いた。不二が、クスリと微笑う。
「僕にとっての倖せならね。幸村との間にあるけど。でも、幸村にとっての倖せは、まずは、病院の外だよ。手術して、早く退院しなきゃ」
 後半、妙に真面目くさった言い方をするから。俺は驚いて不二を振り返った。そのタイミングで、唇を重ねられる。
「退院したら、きっと、今以上の倖せが待ってるよ」
「………今以上、か。それでは、俺が今、幸せみたいな言い方だな」
「倖せでしょう。なんたって、僕が傍にいるんだから」
 真剣な顔を崩し微笑うと、不二は言った。随分と自信過剰だな、と俺も微笑う。
「あ。勿論、退院しても、僕は幸村の傍にいるから。だから、もっと倖せになれるよ」
「………だといいけどな」
 クスクスと微笑いながら言う不二に、俺も似たように微笑いながら返すと、もう一度キスをした。
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