338.真っ白な切符(不二真)
「はい、これ」
 微笑いながら、不二は後ろに隠していたものを俺に差し出した。
「何だこれは」
 受け取り、それをまじまじと見つめる。そんな俺を見て、ふふ、と微笑うと、不二はどこからかもう一枚それを取り出した。
「何だと思う?」
「分からないから訊いているのだが?」
「ほら、また」
 考えもせず、直ぐに聞くんだから。仕方ないな、というような口調で言うと、不二は俺の手を引き、座らせた。
 名刺よりも小さな白い紙。それをテーブルに置き、ペンをとる。
「何をするんだ?」
「何をしたい?」
 訊く俺に、不二は顔を上げると訊き返してきた。言っている意味が分からずに黙っていると、不二は何も言わずにその紙に視線を戻した。
「これはね、未来への切符なんだ」
「………?」
「ここにね、2人の未来を書いて。僕たちはそれを持って走るんだ。真っ直ぐに、ね」
 ペンの後ろで、トントン、とその未来への切符とやらを叩くと、不二は再び俺に視線を向け、微笑った。その顔に頬が赤くなったが、俺はそれを隠さずに微笑い返すと、そうだな、と呟いて不二との未来に思いを馳せた。
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