348.散り行く花(不二跡)
「ホント、君ん家って何でもあるよね」
 クスクスと微笑いながら、不二は俺の前を歩く。その先に見えるのは、桜。
「ここでいいかな」
 その中でも一番樹齢が長い桜の木を迷わず選ぶと、不二はその下に持っていたシートを広げた。それと、不二が作ってきたと思われる弁当も。
「お前、2人なのにこんなに食うのか?」
「雰囲気だよ、雰囲気。少ないと、ちょっと淋しいじゃない」
 言うと、不二は俺の手を掴み、半ば強引に隣に座らせた。
 雰囲気、か。だが、こんな広いシートに弁当を広げて。それなのにここまでくっついてたら、結局寂しいことにはかわりねぇと思うが。
「ん?」
「わかんねぇ奴だな、てめぇは」
「その方が、興味を惹くでしょう?」
「まぁ、そうだがな」
 クスクスと微笑いながら見つめあう。と、風が吹いて、俺たちの視界を遮るように桜の花びらが舞った。
「っ」
 桃色の視界。開けたと思ったら、今度は真っ暗になった。唇に、温もりを感じる。そして背中には、冷たい地面の温度。
「不二っ!?」
 開けた視界。見上げると、不二はそこには居なくて。俺の首筋に舌を這わせ、そしてきつく吸い付いた。
「君には、桜よりもこっちの花びらの方が似合うね」
「バーカ」
 顔を上げ見つめる不二に、俺は微笑いながら呟くと、その首に腕を絡めた。
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