349.仲良し(不二塚) ※アニプリ『三年目の本気』
「ふふっ」
 並んで歩いていると、突然、不二が妙な声を上げた。
「何だ?」
「気づいてる?これって、相合傘」
 オレを見上げて、嬉しそうに言うから。直ぐに離れることも出来ず、オレはただ顔を紅くして視線を前に戻した。
 突風が吹き、雪が頬に触れる。
「こうしてると、僕たち、仲良しに見えるかな?」
「……それだとまるで、オレたちが仲が悪いようないいかただな」
「でも、仲良しとは言えないでしょう?」
 まだ頬が熱く、不二を見ることが出来ないから。オレはただ黙って前を向いていた。
 くす、と微笑い声が隣から聴こえる。かと思ったら、時々ぶつかっていた腕が、意思を持ってオレに触れてきた。
 視線を落とす。
「不二?」
「傘(これ)あるから。本当は、腕、組みたいんだけどね」
 半ばオレを押すように体をくっつけると、不二は微笑った。また、顔が紅くなる。
「ねぇ、手塚」
「……何だ?」
「君を好きだって言ったら。変、かな?」
 いつもより少しだけしぼんだトーンが気になって。頬はまだ熱かったけれど、オレは視線を不二に向けた。オレと目が合うと、不二は無理矢理といった風な笑みを作って見せた。
「やっぱり、変、だよね。男同士だし。そこまで互いを知ってるわけじゃないし。うん。僕たちは、友達」
 後半は、自分に言い聞かせるように。不二は笑顔のままで言うと、オレから目をそらした。前を向き、くっつけていた腕も、距離を置く。オレはそれに、気づかないフリで黙って歩いた。
 けれど、頭の中を、不二の『好き』がぐるぐると回っていた。離れた腕が、少し、寒い。
「……手塚?」
「?」
「腕」
「……ああ。すまん」
 不二に言われて、オレはいつの間にかくっついていた腕を慌てて離した。クスクスと、不二が微笑から。咳払いをして、それをやめさせた。
「別に、変ではないと思うが」
「うん?」
 見つめてくる不二に、深呼吸をする。けれど、そのまま見つめ続けることが出来なくて。オレは、視線を前に戻した。
「オレも、不二が好きだ、し」
「………それって、どういう意味で?」
「多分、お前と同じ意味だ」
 相変わらず視線を前にしたままで、呟くように言う。すると、突然腕を掴まれ、強く引かれた。
 視界が、暗くなる。
「こういう意味でって事で、いいの、かな?」
 唇を離すと、不二はオレの顔を覗き込んで、窺うように微笑うから。オレは紅くなった顔で、出来る限りの笑みを見せた。
「良かった」
 オレの笑みに、不二は安心したように呟くと、いつも以上に穏やかに優しく微笑った。
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