363.ピンからキリまで(不二リョ)
「なーんで、大人しく出来ないんスかね、あんたは」
「しょうがないでしょう。足、痺れちゃうのは」
「だからってっ、やめっ」
「それに、1時間ゲームをしたら、15分の休憩。これ、常識だよ」
「これの何処がきゅうけっ…だーっ、もう!」
 執拗な僕の手つきに諦めたのか、彼は素早くコントローラーのボタンを押すと、ゲームをセーブした。僕から降り、ハードのスイッチを切る。
「足、痺れてるんじゃなかったんスか?」
「ん。もう直った」
 向かい合うように膝に座り直す彼を抱き寄せると、僕はクスクスと微笑いながらキスをした。納得が行かないといった風だった彼の顔が、柔らかくなる。
「ったく。一度くらいは始めから終わりまで、俺の勇姿、見ててくださいよ」
「見てるじゃない、いつも」
「どこがっ」
「そうやって僕を誘う姿は、なかなか勇ましいものがあるよ」
「誰も誘ってなんっ……はっ。ぁ」
「説得力無いなぁ、その顔じゃ」
 クスクスと微笑って言う僕に顔を真っ赤にすると、彼は、そんなこと言うなら、と呟き、大きく息を吸い込んだ。
「最初から最後まで目を離さず、ちゃんと俺の勇姿、見ててくださいよ」
「え?」
 思いがけない彼の言葉に不覚にも固まってしまった僕に、彼はニッと微笑うと、誘うようなキスをしてきた。
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送