364.モノは使いよう(不二切)
「オレ、不二サンみたいなヒトになりたいんスよ、かぁ…」
 溜息混じりに呟くと、僕は空を見上げた。一時間の間に大分その色は変わっていて。既に、鈍色。今にも、雨が降り出しそうだ。
「さっきまで、いい天気だったのにな」
 待ち人来ず。呼び出したのは自分だから、またないわけには行かないけど。
 告白を断ると、だったら友達でもパシリでも何でもいいから傍に置いてくださいみたいなことを彼は言ってきた。そのときの彼の目は異常だったし、そもそも彼自身が異常だったから。断ろうと思ったんだけど。
「モノは使いようと言うだろう、なんて。騙されたよなぁ」
 電車が通り過ぎても彼は姿を現さないから。きっと、さっきの電車には乗っていなかったのだろう。思わず、溜息。
 僕と彼のやりとりを聞いていた柳くんが、僕にそう耳打ちした。それなら、パシリとしてなら、僕を好いているぶん使えるかもしれない、なんて思って。彼の申し出を受け入れたんだけど。
 遅刻ばかりするパシリは、パシリとは言えないよな。
 今日で4度目の呼び出し。過去3回とも2時間の遅刻。そして今日も、このままだと、2時間の遅刻になりそうだ。
 まったく。嫌になる。
 とは言え、もしかしたら時間通りにくるかもしれないなんて思って、ついつい呼んでしまう僕も僕なんだけどね。
 あーあ。今日もまた、僕はシャッターチャンスを逃しちゃったらしいな。
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