――神様どうか、この想いを彼に届けてください。 「どうしだ、長太郎。ロザリオなんか握り締めて」 「あ、いいえ。何でもないです」 どうやら、無意識に十字架を握り締めていたらしい。俺は宍戸さんに苦笑いをすると、その十字架をしまった。初めて彼を見たときから俺の祈りは始まっているのだから、今更神に願わなくても…。 でも、やっぱり。 思い返し、俺は十字架をもう一度取り出すと、しっかりと握り締めた。十字架にキスをし、想いを刻み付ける。 目の前にいる人は、相変わらず跡部さんと張るくらいの美技を放っていた。こんなに華麗なプレイが出来るのは跡部さんだけだと思っていたので、俺は一瞬にして眼を奪われてしまった。 初めて彼を見たのは、ルドルフの観月さんとの試合。0-5から1ポイントも与えず、しかもそれを本気も出さずにやってのけた。その姿が、いつまでも俺の中にあって。 まるで、恋でもしてしまったかのように。 あの人と向き合ってみたい。その想いだけで、レギュラーを勝ち取ったと言っても過言じゃないくらいだ。 俺の技はまだまだ荒くて。彼と肩を並べるには全然足りないけれど。それでも、レギュラーになれたお陰で、こうして間近で彼を見ることが出来た。だけど、俺の本当の願いはそれじゃない。 「おい、長太郎。しっかり応援しろよ。次取られたら負けだぜ」 「あ。はいっ、すみません」 彼のプレイに見惚れていて、これが大切な試合だということを忘れていた。 全く気にしていなかったスコアボードを見ると、1-5で勝っていた。 「……不二さん…」 「お前、疲れてるのか?俺が応援しろつったのはジローの方だ」 「あ、はいっ」 「ったく」 彼の試合を見ていると、どうしても他のことが上の空になってしまう。そうだ。勝っているのは敵である彼で。俺たちは、応援するべきジローさんは負けているんだ。 悔しさに、天を仰ぐ。十字架を握り締める手に、自然と力が入る。 どうして神は、こんなにも酷い運命を俺に与えたのだろうか。こんなにも、彼を想っているのに。 敵同士ならばいっそ、彼と戦わせて欲しかった。彼と向き合うことすら許してくれないなんて。 それとも、これから俺に素晴らしき運命を与えてくれるとでもいうのだろうか。 どちらにしても、こんな感情、誰にも言えるはずがない。彼が俺の気持ちに気づくまでは。神が、この想いを彼に届けてくれるまでは…。 「ゲームセット。ウォンバイ青学、不二!」 |
365のお題で『誰にも言えない』に投票してくれた人がいまして。 そのとき、鳳の秘め恋だったかな?そんな感じのコメントがありまして。 ちょうどいいんで、書いてみました。でも鳳ってキリシタンじゃないんだよね? つぅか、またマイナーCPを作ってしまいましたね。 不二鳳でフジトリで良いんですか?だって、フジオオって読むと、不二×大石になっちゃうし。 |
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