3.砂糖 |
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「っ」 息を詰め、掴んでいた不二の頭を強く押し付けると跡部は吐精した。それは二度目だというのに濃く粘ついていて、しかし不二は何の躊躇いもなくそれを飲みくだした。 「また、全部飲んだのか?」 「当たり前」 「よくもそんな不味いもんを」 「不味くはないよ。跡部のものは、何でも甘い。まるで砂糖みたいに」 笑いながら、不二はわざとらしく舌を出すと自分の手に付いた白濁したものを舐めとった。見ている者が喉を鳴らしてしまうほど、美味そうに。 馬鹿馬鹿しい。 一瞬、自分も不二のものなら飲んでも構わないかもしれないと思った跡部は、溜息を吐くとその考えを振り払った。挿れられることは自分も快楽を得られるから構わないが、口ですることは自分に何の快楽もないため、それだけは絶対にしないと跡部は決めていた。 一体何が楽しくてこの男は自分のものを舐め続けるのか。三度それを口に含んだ不二をぼんやりと眺めながら、跡部は思った。しかし、目はぼんやりとしていたものの、それ以外の部分ははっきりとしていた。 一ヶ月ぶりの性交。ベッドに入るなり、不二は跡部のものを舐め続けている。他の部分は軽く撫で回すだけで、強い刺激は与えてこない。そのもどかしさに、跡部は射精の快楽に浸りきれないでいた。 「お前、いい加減にしろよ」 「何が?」 「…………」 聞き返され、跡部は黙った。まさか、自分から挿れて欲しいなどと言えるはずも無かった。男としての快楽なら、不二の口淫によって充たされているのだから。 挿れたいと思うならまだしも、挿れて欲しいと思うことが、跡部の中では未だに躊躇いになっていた。p まるで女みたいじゃねぇか。不二がそんなことを思うはずがないと分かっていても、口淫は決してしないという無駄なプライドと同じものが、跡部の中にはあった。 「んっ」 だが、いつまでもこうして射精だけを促されるも限界だった。確かに快楽はあるが、体だけが充たされているという気がして。 「また、飲む気じゃねぇだろうな?」 それでも勃ちあがってしまうそれに、跡部は射精したくなるのを堪えながら言った。 不二の目がようやく跡部を捕らえる。 「そう思うんだったら、出す時に頭、押さえつけないでくれるかな?まるで飲んでくれって言ってるようにしか、僕には思えないよ」 「ふざけるな」 「……にしても、元気だね。幾ら久しぶりだからって。そんなに溜まってた?」 溜まってるわけじゃねぇ。お前が巧いからだ。そういおうとして、跡部は口ごもった。それは不二が強い刺激を与えてきたからというだけではなく、ある記憶が甦ったからだった。 随分と巧いんだな。濃密なキスを交わした後、跡部はそう言ったことがあった。それは単に、息が上がってしまったことの恥ずかしさを隠すための言葉だったのだが。 誰と較べてるんだい。呟いた不二の表情はそれまでの穏やかなものとは一転していて、その先は手つきまでも乱暴に、まるで強姦のような夜になった。 だが。と、跡部は現在に思考を戻して思った。それを利用すれば、自分からねだらなくとも自分の望む行為を不二はしてくれるかもしれない、と。例えそれが乱暴なものであったとしても、今は構わない。 「溜まってるわけじゃねぇよ。お前が、巧いからだ」 「……それは、誰と較べて?」 意を決して言った跡部に、案の定、不二は顔色を変えて呟いた。狙い通りになったことが嬉しく、跡部が口元をつりあげる。 「言う気がないなら、言うまで犯すよ?」 跡部の笑みを誤解した不二は、青い目を開いた。その顔はもう跡部の下腹部にはなく、正面にから真っ直ぐに跡部を見つめていた。 やってみろよ。跡部はそう言おうとしたが、出来なかった。跡部が口を開いた時には既に、望みは叶い、深く不二が入り込んでいた。 「くっ、あ」 慣らされてはいなかったものの、散々焦らされていたせいでそこは充分に潤い、容易く不二を受け入れた。そのことが、不二に更なる誤解を与えた。 「慣らしてないのに、緩いね。誰に広げてもらったのかな?」 白い手で跡部の腰をしっかりと掴み、最奥を何度も激しく突き上げる。それは痛みを伴う快楽ではあったが、跡部は喘ぎで閉まらない口で、それでも笑っていた。 不二のくだらない嫉妬心の方がよほど砂糖のように甘いと、そんなことを思いながら。 |
女のように求め喘ぐのが嫌いな跡部。でも刺激は欲しい。 |
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